その時、船内の一角から急な報告音が鳴り響いた。技術担当の一人が慌てた様子でモニターを指差しながら、「斎藤さん、こちらに新たなデータが届いています。特定のセクションで、急激な心拍数の上昇とともに、微妙な意識の低下が見られるんです。どうやら、あの物品の影響は、物質的現象だけでなく、人体にまで深く関与しているようです」と報告した。
斎藤はその報告を受け、深いため息をつきながら、「皆さん、これが単なる偶然や一過性の現象ではないことは明らかです。このデータは、いわば我々が感じている内面の崩壊が、科学的にも裏付けられている証拠です」と語り、顔には厳しい決意が浮かんだ。
「もし、我々の精神状態にこの影響が長期間及んだ場合、チーム全体の機能が著しく低下する恐れがあります。」中村は、静かながらも力強い口調で続けた。「迅速に、カウンセリングや対策の方法を模索し、必要ならば一部の隊員を一時的にでも休ませる体制を整えるべきです。」
ローレンスは、データの解析結果をさらに深堀しながら、「この物品は、私たちの心理状態の奥深くに潜む恐れや、かつて封じ込められた忌まわしい記憶と結びついている可能性がある。古代の封印が解かれた先に、ただの科学的現象ではない、心理的な狂乱が隠されているのです」と、情熱的に語った。
会議室に集まった全員は、その言葉に重く頷き、各自が抱える内面の不安と向き合わざるを得なかった。斎藤は、深い瞳を虚空に向けながら、「私たちは、今後この現象がさらに進行する前に、全てのデータと各人の体調、精神状態を厳重に記録する必要がある。計測器のデータだけでなく、自己申告も含めた総合的な評価を行う体制を整えよう」と命じ、チーム全体に覚悟を促した。
中村は、手元のタブレットに記録された数値と、各隊員からの報告を丁寧に確認しながら、「個々の精神状態の変化を見逃すことなく、適宜対策を講じる必要がある」と改めて強調した。技術担当者もまた、新たな生体センサーを用いて、各隊員の心拍数や脳波の変動をリアルタイムで監視するシステムのセットアップに取り掛かった。
ローレンスは、ふと一息つくと、低い声で呟くように、「この状況は、単なる偶然の連鎖ではなく、あの物品が放つ不吉なエネルギーが、我々に深い内面の崩壊と向き合わせようとしているのかもしれません。古代の禁忌が、今、我々の生活に影を落とし始めている…」と、その言葉には、自身の内面で渦巻く恐怖と諦念が色濃く反映されていた。
斎藤は、数値と映像を再確認しながら、「今後、一刻も早く、さらなる調査と対策を講じなければならない。もし、この影響が拡大すれば、我々の探査だけでなく、隊員一人一人の命にも関わる問題となる。皆、冷静に、そして互いに助け合ってこの危機に立ち向かってほしい」と、厳粛な表情で隊員たちに語りかけた。
