深海の叫び – 第3章:深海の呪縛 後編

「この石板に刻まれた文字は、我々の知らない古代語で、伝説の『海の主』に捧げた祈りを表している可能性があります」と、ローレンスがデータを見ながら、興奮気味に述べると、斎藤は冷静に「仮説として面白い。しかし、あくまで科学的検証が必要だ。古代文明の記録や文献とも照合し、慎重に解読する必要がある」と応じた。

また、別の技術担当者が、リアルタイムで映し出されるデジタルデータを指し示しながら「この祭壇周辺では、常に一定の振動が記録されています。振動数は、我々がここまでに確認した中で最も著しいもので、もしかすると、古代の儀式の際に用いられた特定の楽器や鐘の音に相当するリズムかもしれません」と報告し、場内は一層、科学と神秘が交錯する雰囲気に包まれた。

中村は、改めて全員に向け、「私たちは、この地で起きている現象を明確に記録し、分析することで、古代の儀式の真実に迫ろうとしています。各自、細かい異常値や映像の変化、そして自らの心の状態をしっかり把握してください」と力強く呼びかけ、隊員たちはそれぞれの任務に邁進した。

斎藤は、深い考慮の末に、こう告げた。「皆さん、今私たちは、古代文明の封印とその解放がもたらす、ある種の狂気の覚醒を目前にしています。今後、さらに精密な解析と、内面の精神状態のモニタリング体制を強化し、この深淵の儀式が、我々に何を語りかけようとしているのか、その答えを探らねばなりません」彼の声は、静かな決意とともに、船内全体に重く響いた。

ローレンスは、最後に静かに、「この広間に残されたすべての記録と象形文字、そして祭壇に刻まれた一つひとつの記号が、私たちに伝えるべき古代の知恵、その深淵の儀式の真意を見出す鍵となることを、私は信じています」と、未来への期待を織り交ぜた言葉で締めくくり、全員が深海の呪縛と狂気への覚醒に向かう決意を新たにする中、探査隊は次なる調査段階に向けて、一層の準備を進め始めた。

序章:前編後編 第1章:前編後編 第2章:前編後編 第3章:前編|後編

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