深海の叫び – 第1章:禁断の遺跡 後編

序章:前編後編 第1章:前編|後編

内部への一歩と謎の刻印

艦載ドローンが禁断の遺跡の入り口に近づき、その映像がブリッジに映し出されると、探査隊全員の視線は一点に集中した。壁一面に刻まれた複雑な模様――幾何学的な線と奇妙な動物模様、そして抽象的な記号たちは、何世紀にもわたり風化したものの、なおも神秘的な輝きを放っていた。深海の暗がりの中、これらの刻印は、かつて存在した文明の一端を物語るかのようであり、同時に未知の恐怖をも彷彿とさせた。

斎藤は、操縦席に座りながら、慎重に映像を確認した。「この入口は、確かに人工の痕跡が見受けられる。ただの自然の岩肌とは違う。どうやら、我々は今から内部へと一歩足を踏み入れることになるようだ」彼の声は、冷静な分析と同時に、僅かな不安をも滲ませていた。

中村は、すでに防水装置を身につけ、深海服の調整を行いながら、斎藤に問いかけた。「斎藤さん、この内部の構造について、何か予想はありますか? あの彫刻から察するに、ただの避難所や埋蔵庫ではなさそうです」

「そうだな」と斎藤は答え、手元の計測機器の数値を見直しながら続けた。「ここには、かつての儀式や、神聖な行事の痕跡が残されている可能性が高い。建築の構造自体も、ただ堅牢なだけでなく、何かの象徴を表現しているように見える」

その頃、ドクター・ローレンスは、映像に映る壁の刻印に見入っていた。目を細めながら、低い声で呟く。「これらの刻印は、まるで古代の呪文のようだ。各記号が何を意味しているのか、私には既にいくつかの仮説がある。しかし、明らかに単なる装飾以上のものだ」と、彼は独特の情熱を込めて語った。

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