「この映像、見てください」と、若い技術担当者が指をさしながら報告した。「暗闇の中で、はっきりとした影が動いているのが確認できます。一定のリズムで現れるその影は、まるで集団的な意志を持っているかのようです」
斎藤は、その映像に真剣な眼差しを向けながら、「我々は、この現象が何を意味するのか、そしてそれがどのようにして、隊員たちの心に影響を与えているのかを、徹底的に解析しなければなりません」と宣言し、その声は静かに響いた。
ローレンスは、映像を見つめながら、熱意を込めて続けた。「恐らく、この異常な現象は、探査艇内での体験だけでなく、私たちの内面に潜む恐怖が現実世界に現れ出した結果なのでしょう。私の考えでは、これが連鎖的な惨劇へと発展する前触れであり、我々の精神を暴走させる引き金となっているのです」
中村は、隊員たちに向けた呼びかけを再び強調しながら、「皆さん、今は冷静に、しかし確固たる判断を持って行動してください。私たちは、この連鎖する異常現象を、全て詳細に記録し、後で原因を究明する手がかりとしなければなりません。どんな小さな変化でも見逃さないよう、常に警戒を怠らないでください」と、穏やかに、しかし強い意志で言った。
探査隊全体は、深海からの異常なエネルギーと共に、次第に制御不能に近い精神の乱れを体験し始め、隊員同士は互いの顔に恐怖と不安を隠せず、連鎖的な現象が拡大していく中で、その一瞬一瞬が歴史の中の重い記録として刻まれていくように感じられた。斎藤は、全員が、これまで以上に各自の心と体の状態を綿密に監視し、異変が現れる前に迅速な対策を講じるよう、最後の指示を出し、また会議室に集まった隊員たちは、薄暗い照明の中で深い溜息と共に、それぞれの未来を不安に思いながらも、今この瞬間、果敢に未知の狂気に立ち向かっているのであった。
