静かなる救済 – 第3楽章

連鎖する旋律

日が経つにつれ、ミナの家のアップライトピアノの前は、ユウキとミナの特別な場所となった。初めはただの趣味としてのピアノ演奏だったものが、次第に互いの欠けた部分を補う形での連弾となった。ユウキが右手で、ミナが左手で、それぞれのキーを叩き、一つの美しいメロディを紡ぎ出した。

練習の初めのころ、二人の手は時折ぶつかることもあった。しかし、それを乗り越えるために、二人はお互いの動きや呼吸、リズムを感じ取る練習を重ねていった。その中で、ユウキとミナは、音楽だけでなく、互いの気持ちや想いも共有するようになった。

ある日の練習中、ユウキが微笑みながらミナに言った。「ミナ、君との連弾は、まるで新しい楽器を手に入れたような感覚だ。私たちの音楽は、各々の演奏よりもずっと深く、豊かだ。」



ミナもユウキの言葉に頷きながら、「私もそう思います。ユウキさんとの演奏は、私の心の中で響く特別なメロディです。」と答えた。

そして、驚くべきことに、ミナの失言症の症状も徐々に改善されていった。音楽を通じて心が解放され、言葉に自信を持つようになったのだろう。ある日、ユウキはそのことに気づき、彼女に声をかけた。「ミナ、最近、君の言葉がどんどんスムーズになってきたね。」

ミナは少し照れくさい表情を浮かべながら答えた。「ええ、ユウキさんとの連弾のおかげです。心が安定して、言葉を正しく表現できるようになったんだと思います。」

二人の間には、音楽を通じて築かれた絆が強く存在していた。そして、その絆が二人の人生に大きな変化と成長をもたらすこととなった。音楽の力、そしてお互いの支えが、二人の未来を明るく照らしていた。

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