美沙は目を開けた。白い天井が目に入った。どこだろう?自分は誰だろう?頭が痛い。何も思い出せない。美沙はパニックになりそうになったが、そのとき、ドアが開いた。
「美沙、目が覚めたの?」
声の主は若い男性だった。彼は優しい笑顔で美沙のベッドに近づいてきた。美沙は彼を見ても何も感じなかった。彼は誰だろう?
「美沙、僕は健太だよ。あなたの夫だよ。」
健太と名乗った男性は美沙の手を握った。美沙はその触れ合いにも何も感じなかった。彼は本当に夫なのだろうか?
「美沙、覚えてる?あなたは事故に遭ったんだ。車に轢かれてしまって…」
健太は涙ぐみながら話した。美沙は事故に遭ったという言葉にも何も感じなかった。自分がどんな人生を歩んできたのか、全く思い出せなかった。
「でも大丈夫だよ。あなたは生きてるんだから。僕と優子がずっとそばにいるから。」
健太はそう言って、写真を見せてきた。写真には健太と美沙ともう一人の女の子が笑っていた。
「これは優子だよ。あなたの娘だよ。」
健太は娘と言ったが、美沙はその女の子を見ても何も感じなかった。彼女は本当に娘なのだろうか?
「美沙、信じてくれ。僕らは家族なんだよ。あなたを愛してるんだよ。」
健太はそう言って、美沙にキスをした。美沙はそのキスにも何も感じなかった。彼は本当に愛してるのだろうか?
美沙は自分の心に隙間を感じた。自分が本当に自分であることを確信できなかった。