和菓子の灯がともるとき – 01月01日 前編

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朝の澄んだ空気に包まれた新年の早朝。由香は母・祥子と父・洋一の三人で、地元の神社へ初詣に出かける準備をしていた。昨夜は大晦日のイベントで帰りが遅かったため、少し眠気は残っていたが、父と一緒に初詣ができることを考えると足取りも軽く感じる。かつては普通のことであった「家族揃って初詣」が、今年は特別な行事のように思えた。

家を出てすぐ、父が「ちょっと歩くの遅くなるかもしれないけど、待たなくていいからな」と笑顔で言う。入院生活の影響で足腰が弱っているとはいえ、こうして一緒に外に出られること自体がありがたい。母は「そんなこと言わずに、一緒に行きましょうよ。置いていくわけないじゃない」と少し怒ったふりをしながらも、どこか楽しそうだ。由香も「大丈夫? 無理しないでね」と言いつつ、父が転ばないように気を配って歩く。父は「いや、本当に大丈夫だよ」と、昨夜のイベントでみんなから声をかけられ、元気をもらったかのように頬をほころばせる。

しばらく歩くと、鳥居が見えてきた。新年の神社は朝早いにもかかわらず、既に参拝客がぽつぽつと訪れている。赤い鳥居をくぐるとき、由香はなぜか少しだけ背筋が伸びるような緊張感を覚えた。それは毎年の初詣でも同じような気分になるが、ことさら今年は「父と一緒にここまで歩いて来られた」という特別さがあるからかもしれない。境内へ進むと、清々しい空気に混じって、おみくじを結ぶ人々の気配や神職の方の声が聞こえ、いっそう新年らしさを感じさせた。

「初詣くらいは一緒に行くべきかなと思って」

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