おひさまのぼうし

山に囲まれた小さな村に住む少年、ユウはいつも灰色のぼうしをかぶっていた。そのぼうしは数年前に母が買ってくれたもので、少し角が折れているのがユウのいちばんのお気に入りだった。クラスメイトのチカは、「ユウってさ、寒くても暑くてもぼうしかぶってるよね」と不思議そうに尋ねる。ユウは照れくさそうに笑いながら、「うん、なんだか安心するんだ。お日さまもまぶしいし……」と答えた。それを聞いたチカは「そうなんだ。じゃあそのぼうしはユウにとっての宝物なんだね」と言って、ちょっとだけうらやましそうに微笑む。

村は山あいに位置しているため、日当たりがあまり良くない場所も多く、朝晩は特に肌寒い。最近は天候も不安定で、村の人々は「作物が育ちにくくて困ったなあ」「お年寄りや子どもが風邪をひきやすいねえ」と口々に心配していた。ユウはそんな声を聞くたび、自分にも何かできないだろうかと思わずにいられない。大人たちが夜遅くまで協議しているのを耳にすることもあり、どうにかしたい気持ちが募っていた。

ある日の放課後、ユウはいつものように村はずれの森へ探検に出かけた。森の中には古い切り株や大きな落ち葉のじゅうたんがあり、ユウはそこを歩くのが好きだった。風に揺れる木々の音を聞いていると、まるで森じゅうが歌っているように感じられる。その日も鳥のさえずりに耳をすませながら足もとを注意深く見ていると、突然、何か金色にひかるものが落ちているのに気がつく。

「なんだろう?」と近づいてみると、それは見たこともない色合いの不思議なぼうしだった。まるで太陽の光をまとっているかのように、オレンジ色や金色のきらめきが混ざり合いながら、そっと木漏れ日の中で光っている。ユウは半信半疑で手に取り、ためしにそっとかぶってみた。すると体の奥からポカポカとしたあたたかさが湧き上がり、まるで太陽そのものがすぐそばにいるような感覚にとらわれた。

「すごい……!」ユウは驚きで声をあげる。さらに森の木立を見上げると、頭の上のぼうしからやわらかな光が広がり、葉っぱのすき間を縫うように地面を照らしている。試しに手をかざしながら歩いてみると、自分が向けた先にほんのりとした太陽の光が降り注ぎ、その場所だけ小春日和のようなあたたかさになる。「これって、ぼうしが太陽の光を呼び出してるのかな……?」ユウはわくわくしながらつぶやいた。

その日は不思議な気分のまま、ユウは家へ帰った。家に着くと、母が心配そうに声をかける。「ユウ、遅かったけど大丈夫? 森には変わったものなんてなかった?」ユウは少し迷ったが、「ううん、とくに変わったことはないよ」と答えた。まだこのぼうしの力をどう説明すればいいのか自分でもわからなかったし、何より母を驚かせたくなかったのだ。