前編 後編
相馬祐一は次の日、村の長老と再度話すことにした。彼の頭の中には赤い糸と村の伝承、そして織物職人から得た情報が駆け巡っていた。長老との話が、この複雑なパズルの欠けた部分を補うことを期待していた。
しかし、長老たちは相馬の質問に冷たかった。彼が村の過去を掘り下げ、秘密を暴こうとする態度に、彼らは警戒感を抱いていた。しかし、相馬は諦めずに、何とか彼らを説得し、より詳細な情報を引き出そうと努力した。
その中で彼が引き出した情報の一つは、赤い糸の神聖さについてだった。長老たちは、赤い糸が神々の絆を象徴し、それを壊す者には厳しい罰が待っていると語った。そして、赤い糸を壊すことは、神々を冒涜する行為であり、それがこの連続殺人事件の原因である可能性を示唆した。
その言葉は、相馬の心に深い影を落とした。しかし、彼はその恐怖を押し殺し、調査を続けた。彼はそれが真実であるとは思わなかったが、その考え方が事件の背後にある動機を理解する手がかりになるかもしれないと感じたからだ。
相馬は更に調査を深め、過去の事件現場を再訪し、事件に関わった可能性のある村人たちに話を聞いた。彼はある一定のパターンを発見し始めた。それは、被害者たちが皆、何かしらの形で村の伝統を破った人物だったという事実だ。それは信仰に背く行為であったり、赤い糸を無尊重に扱ったりしたことが、その人物たちの死を招いたという仮説を彼は立てた。
しかし、相馬はまた別の事実も発見した。それは、被害者たちが皆、赤い糸を作る織物職人の家族と何らかの形で関係があったということだ。それは単なる偶然なのか、それとも何か他の意味があるのか、彼はまだ確信を持てなかったが、その情報は彼の中で大きな影響を及ぼした。
さらに相馬の疑念を深めたのは、彼自身が村の中で目撃された事件だ。彼が調査のために村を歩いている最中、突如として彼の足元に赤い糸が現れたのだ。彼は慌てて周りを見渡したが、誰もいなかった。それはまるで彼自身が次のターゲットであるかのように思われ、彼の心は冷たい恐怖に包まれた。
夜が降りると、村は再び闇と静寂に包まれた。しかし、相馬はその静寂が今までとは違うように感じた。それは恐怖と緊張が混ざり合った不穏な静寂だった。彼は赤い糸の謎がついに彼自身を巻き込みつつあることを強く感じていた。
しかし、彼はその恐怖を振り払い、真実を追求することを決意した。彼は赤い糸の謎と村の秘密、そしてそれらがどのように連鎖しているのかを解き明かすために、彼は再び夜の村を歩き始めた。
