影の季節 – 第2話

第1話 第2話

事件

冬の訪れを感じる頃、村全体にどんよりとした雲が立ち込めるようになった。特定の日が近づくにつれて、村人たちの顔色はさらに暗くなっていった。子供たちの笑い声も少なくなり、大人たちは家の中で固まって何かを話していることが多くなった。

樹も雪乃との交流を深める中で、その日のこと、村の伝説のことをよく知るようになっていた。彼女の表情は、それまでの明るさが影を潜め、不安そうな表情を見せることが多くなった。樹は彼女に何度も話しかけたが、彼女は「大丈夫」と言いつつ、何かを隠しているようだった。

ある晩、雪乃は樹のアトリエを訪れた。「樹さん、私、この日が本当に怖いんです」と彼女は打ち明けた。「でも、どうしても村を出るわけにもいかない。私の家族、先祖代々この村に住んできたから…」

樹は彼女の手を握り、励ました。「雪乃、大丈夫。君がどんなに不安だろうと、僕が側にいるよ。」

その夜、二人はアトリエで長い時間を過ごした。樹は彼女のために絵を描き、彼女はその絵の前で穏やかな時間を過ごすことで、少しの安心感を得ていた。



しかし、冬の特定の日。朝、樹が雪乃の家を訪れると、彼女の姿はどこにも見当たらなかった。家の中は慌ただしく、雪乃の家族が何かを探している様子だった。

「雪乃はどこに!?」樹が声を上げた。雪乃の母は涙を浮かべながら、樹に答えた。「今朝、目を覚ましたら、雪乃がいなくなって…。」

村人たちも雪乃の失踪を知り、大勢で山や森を捜し始めた。しかし、彼女の姿はどこにも見当たらなかった。村の伝説が再び現実となったのだ。

樹は自らを責め、絶望の中、自分のアトリエに戻った。すると、彼が前夜に描いた絵の中に、雪乃の姿が描かれていた。彼女は悲しそうな表情で、遠くの山を指さしていた。

彼はこの絵に何かの手がかりが隠されていると直感し、絵の中の山を目指して向かった。彼は、雪乃を救うため、そして真実を知るため、村の闇と向き合う決意を固めたのだった。