影の季節 – 最終話

解放

朝の光が、雪乃を包み込む。彼女の頬には、涙の跡が残っていた。樹は、彼女をゆっくりと抱きしめ、村人たちと共に喜びの涙を流した。雪乃が助かったのは奇跡のように感じられたが、他の女性たちの痛ましい運命は、樹の心を重くした。

村人たちは集まり、長老たちとともに祈りの儀式を執り行った。失われた女性たちの魂が安らかになるよう、また村に再び平和が訪れることを願った。

「私たちは、過ちを犯しました。しかし、これを機に、古き信仰を見直し、新しい道を築きたい。」灰色の髪の長老は、村の広場で声を上げた。彼の目には悔いと、新しい未来への決意が宿っていた。

その後の日々は、村に変化の風が吹き込んだ。長老たちは、若者たちと共に新しい信仰を模索し始め、自らの罪を悔い改めるための儀式や祭りを行った。村人たちもまた、伝統や信仰を盲目的に受け入れるのではなく、その意味を理解し、受け継ぐものを選び取るようになった。



樹は、この事件を経て、絵画が人々の心を動かす力を持つことを再認識した。彼は、絵を描くことで、人々の心に触れ、社会を変えることができると信じるようになった。雪乃もまた、樹の絵の中で新しい自分を見つけ、彼と共に新しい人生を歩む決意を固めた。

ある日、樹と雪乃は、村の広場で絵の展示を開催した。彼の描いた絵は、この事件の悲しみや希望、そして村の新しい未来を象徴していた。多くの村人が訪れ、絵の前で涙を流す者もいた。

展示の最終日、樹は雪乃とともに村を後にすることを決意した。彼は、新しい場所で、新しい風景を描き続けることを望んでいた。雪乃は、彼の横に立ち、笑顔でうなずいた。

二人は、新しい未来へと足を踏み出す。彼らの背後には、変わりゆく村の風景が広がり、前方には未知の世界が待っていた。樹の手には、新しい風景を描くための筆とパレットが握られていた。彼らは、新しい未来を刻むための旅路を始めた。

第1話 第2話 最終話

タイトルとURLをコピーしました