序章：前編｜後編
アンナ・カーターは、セントオーガスティン大学のキャンパスに足を踏み入れた瞬間、肌に触れる秋の冷たい風を感じた。彼女の心には、連続自殺のニュースが重くのしかかっていた。これまでに三人の学生が、わずか数週間の間に同じ場所から飛び降りて命を絶ったという。事件の謎を解き明かすために、アンナはここに来たのだった。
キャンパスは紅葉で彩られ、古めかしい建物と相まって美しい景色が広がっていた。19世紀に建てられたゴシック様式の建物が並び、その歴史的な背景は圧倒的な存在感を放っていた。アンナはその荘厳な雰囲気に一瞬圧倒されつつも、記者としての鋭い観察眼で周囲を見渡した。学生たちは様々な活動に勤しんでおり、楽しげな笑顔も見受けられたが、その裏にはどこか不安げな影が漂っているようにも感じられた。
最初に訪れたのは、大学の広報担当者との会合だった。彼女は、事件についての公式なコメントを求めるために学長のオフィスへ向かった。オフィスの扉を叩くと、年配の秘書が彼女を迎え入れた。
「アンナ・カーターさんですね。学長はお待ちしています。」
アンナは深呼吸し、部屋に入った。学長は背の高い男で、白髪交じりの髪と鋭い目を持っていた。
「カーターさん、お越しいただきありがとうございます。残念ながら、ここで起きていることに関して私たちは困惑しています。何かお力になれることがあれば、どうぞおっしゃってください。」
アンナはノートを取り出し、質問を始めた。「学長、これまでに三人の学生が亡くなっていますが、何か共通点は見つかっていますか？特に、亡くなった場所や時間帯などに関して。」
