運命の手紙 – 第1話

運命の出会い

水島優希の平凡な日常は、ある日の放課後、突如として変わり始めた。彼はいつものように学校を出て、友達と別れて家路についた。道中、彼は近くの公園を通り抜けることにした。公園は彼にとって慣れ親しんだ場所で、季節の変わり目を感じながら歩くのが好きだった。

しかし、その日は何かが違っていた。公園のベンチに、一人の男性が倒れているのが目に入った。最初はただの酔っ払いかと思った優希だったが、近づいてみると男性の様子はかなりおかしく、苦しげに息をしていた。混乱しつつも、優希は携帯電話を取り出し、救急車を呼んだ。

救急隊員が到着するまでの数分間、優希は男性の側で待ち続けた。男性は意識が朦朧としており、何かを呟いているようだったが、はっきりとは聞き取れなかった。救急隊員が到着し、男性を担架に乗せて搬送すると、優希はホッとした息をついた。

「大丈夫だったのかな…」そんなことを考えながら、彼は家に向かった。家に着くと、いつものように家族と夕食をとり、その日の出来事を話すことなく、普通の夜を過ごした。

しかし、その夜が普通ではなくなったのは、遅い時間に届いた一通の手紙だった。それは玄関の郵便受けに無造作に投げ入れられていた。封筒には差出人の名前も住所もなく、ただ「水島優希宛」とだけ書かれていた。



優希が封を切ると、中からは一枚の手紙が現れた。そこには、きれいな筆跡で、簡潔ながらも不気味なメッセージが書かれていた。「お前が見たことは忘れろ」。それだけだった。

このメッセージに、優希は背筋が凍るような感覚を覚えた。誰が、なぜこんな手紙を? そして、何を忘れろと言っているのか? 公園での出来事が頭をよぎる。しかし、それがこの手紙とどう関係があるのか、彼には全く分からなかった。

不安に駆られながらも、優希はその手紙を無視しようと決心した。おそらくは誰かの悪戯だろうと自分に言い聞かせ、手紙を引き出しにしまった。しかし、その夜、彼はなかなか眠りにつくことができず、不穏な思いにさいなまれた。

翌朝、優希はいつものように学校に行ったが、心ここにあらずといった様子だった。友達が話しかけても、彼の頭の中は昨日の出来事とその手紙でいっぱいだった。誰にもそのことを話すことなく、一日を過ごした。

家に帰る道すがら、彼は再び公園を通った。昨日とは違い、今日は何も起こらなかった。ただの静かな公園。しかし、優希にとってはもう、ただの場所ではなくなっていた。

その日の夜、優希は再び不安な夢を見た。公園での出来事、そして、あの不気味な手紙。それらが彼の心を支配していた。彼はまだ知らない。この出来事が、彼の人生を大きく変える序章に過ぎなかったことを。

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