「大沢さん、実は……もう一つ気になることがあります。」
「何でしょう?」
「怜子さんが残していた手帳を一部預かっています。その中に、何か参考になることが書かれているかもしれません。」
真知子は机の引き出しから小さな手帳を取り出し、陸に手渡した。その表紙には、古びたレザーの装飾が施されており、中身は書き込みで埋まっていた。
「ありがとうございます。これを調べてみます。」
陸は手帳を大切に抱え、ホールを後にした。
その夜、陸は署に戻ると手帳の中身を丁寧に読み解き始めた。そこには日々の練習記録やコンサートの予定が記されていたが、その中に奇妙な文章が混じっていた。
「雪の降る夜、鐘が鳴るまで真実は閉ざされる。」
この一文が、怜子の失踪にどのような意味を持つのか、陸はまだ掴めていなかった。しかし、この手帳の内容がさらなる手がかりを示していることは間違いないと感じていた。


















