聖夜に注ぐレクイエム – 12月24日

陸が声を荒げると、男は薄笑いを浮かべながら怜子の肩に手を置いた。

「目的か……。10年前の火災事故を覚えているか? あれは単なる不運な出来事ではなかった。私は真実を知る者を消す必要があった。それだけだ。」

「お前が事故を仕組んだのか?」

片桐が詰め寄ると、男は冷たい目で彼を見つめた。

「そうだ。だが、それ以上のことを知る必要はない。怜子も含め、余計な者が真実を暴こうとすれば、同じ運命を辿るだけだ。」

その時、陸は男の隙をついて一気に距離を詰めようとした。しかし、男は怜子の首元にナイフを突きつけ、静かに笑った。

「動くな。君が彼女の命を奪いたくないのなら、慎重に行動することだ。」

陸は立ち止まり、冷静さを取り戻そうと深呼吸した。一方で、片桐は怜子の方に目をやり、彼女の表情が何かを伝えようとしているように見えた。

「怜子さん……。」

片桐が呟くと、怜子は微かに首を振り、教会の奥を指さすような仕草をした。その先には古い鐘が吊り下げられている塔が見えた。

タイトルとURLをコピーしました