夜明けのペンダント – 序章: 第2話

甲板の隙間から漏れる光を頼りに、玲は少し身を乗り出した。そのとき、背後から低い声が響く。

「そこで何をしている?」

気配を感じ、玲は振り返る。波の音にかき消されそうな声の主は、白いコートを着た人物だった。フードを深く被り、その輪郭ははっきりしない。

「誰かが箱を回収しに来たようですね。あなたもその一味ですか?」

玲は改めて手にした箱破片と手袋切れ端を提示する。白いコートの人物はゆっくりと近づき、海風に揺れるコートの裾が砂をかき分ける。

「お前が探偵か。……よくぞここまで辿り着いたな。だが、真実を知る覚悟はあるのか?」

問いかけられた玲の眼差しは揺るがない。彼はポケットから写真を取り出し、影の人物に差し出す。

「これを見てください──昭和初期の松永家の夜会で撮られた写真です。中央にペンダントをかけた祖先の姿がはっきり写っています。この写真を持つ者こそ、真相に手が届くはずだと聞きました」

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