「今夜はこのまま高橋さんの家へ戻り、資料をデジタル化しよう。私が解析する間、君は箱を保管してほしい」
二人が踵を返すと、背後の倉庫扉がゆっくりと軋みを立てて動いた。影が差し込み、白井薫が怒りの形相で立っている。手には小型の光学装置を握りしめ、鋭い眼差しを二人に向けた。
「逃がすと思ったか。お前たちの勝ちではない」
玲はゆっくりと間合いを詰め、羊皮紙の巻き口を指さす。
「お前たちの方法は把握した。封印を解く儀式の全手順をこの紙に書いてある。これを奪われた時点で、黎明の会の優位は崩れ去ったんだ」
白井は顔をひきつらせる。
「ふん……口先だけの探偵め。だが、その紙が真に価値があるかは疑わしい」
玲は強い口調で返す。
「なら証拠を見せよう」
そう言うと、玲はバッグから小型プロジェクターを取り出し、羊皮紙を透過投影する。儀式の図式が地面のコンクリートに浮かび上がり、呪文の文字がくっきりと映し出された。高橋はプロジェクターのスイッチを押し、映像を安定させる。
白井はたじろぎ、惜しむように一歩後退した。



















