夜明けのペンダント – 最終章: 第1話

「まずはロウソクを配置します。航さん、この位置が北、こっちが東です」

玲の指示に従い、航は事前に用意したロウソクを祭壇周囲の彫り込みに慎重に嵌め込む。

「配置が終わりました」

航が告げると、玲は巻物に記された短い呪文を読み上げ始める。石壁に反響する低い声は、やがて広間に静かな緊張を生む。

「──アウレア・レギーナ、命の代償を清め、この石の心を鎮めよ」

呪文の最後を告げたとき、祭壇の上にわずかな光の輪が浮かび上がり、ロウソクの炎が一斉に揺れた。航は息を呑み、そっとロウソクを見つめる。

「光が……揺れています」

「儀式は順調です。次はペンダントをこの箱に戻し、封印符を貼り付ける」

玲は携帯用の木製箱を持ち出し、内側に準備しておいた松永家の家紋が刻まれた封印符をセットした。

その瞬間、背後で床が軋む音が響いた。二人は同時に振り返る。白井薫が薄闇に浮かぶ石柱の影から姿を現し、ローブの裾で床石を擦りながら歩み寄ってくる。

「儀式を妨害するつもりか? 許さんぞ」

白井の声は低く、怒りと執念が混じっている。

玲は毅然と箱を抱え、白井を見据えた。

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