夜明けのペンダント – 第2章: 第2話

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旧松永邸の裏手にある蔦巻く石造りの階段。秋山玲は高橋航を先導し、懐中電灯の細い明かりを頼りに一歩ずつ降りていった。階段の壁には古びた祈祷文がかすれ、地面には湿気に濡れた砂利が散らばっている。やがて、ひび割れた扉の前で足を止める。

「ここが……伏せられた祭壇の間らしい」

玲は扉の隙間から光を漏らし、深呼吸してからそっと押し開けた。中はひんやりと冷え、赤い蝋燭が十本ほど無造作に並んでいる。床には長い年月に割れて崩れた石板が散乱し、その中央には古い木製の祭壇が半ば朽ち果てた姿で残っていた。

「見ろ、高橋さん。祭壇の表面に血の痕跡がまだ残っている」

航は息を呑み、指先でわずかに赤黒い染みを触れた。

「これが──本当に生贄儀式の痕跡なんですね……」

玲は机代わりにして持参した羊皮紙のコピーを広げ、祭壇の縁に刻まれた文様と照らし合わせる。文書に記された「血塗られた願い」がここで交わされていたのだ。

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