異世界農業革命 – プロローグ

 視界を覆う火の粉と白い煙。何かが焼け焦げる匂いと、鋭い痛み。地面に叩きつけられた一樹は、遠のいていく意識の中、何とか首をもたげて状況を確認しようとしたが、それも叶わない。仲間の叫び声もかすかに聞こえるが、耳鳴りがひどく、はっきりと理解することができなかった。痛みが増し、身体の自由が効かなくなる。彼の頭に浮かぶのは「失敗した」という言葉と、「みんな無事でいてほしい」という淡い祈りだけだった。

 それからどれほどの時間が経っただろうか。意識が遠のき、何もかもが暗闇に沈んでいく中、一樹は自分が確かに死に向かっていることを感じ取った。諦めにも似た感覚が心を覆う。しかし、その暗闇の先には奇妙に揺らめく光が見えた。まるで人の形をした何かが手招きするかのように、視界の隅をかすめていく。

 次に目を覚ましたとき、一樹は青々とした空の下、瓦礫ではなく草むらの上に倒れていた。体中を包む軽さに違和感を覚え、そっと手足を動かしてみる。痛みはあまり感じない。むしろ、爆発に巻き込まれたはずなのにまったく傷を負っていないことに驚かされた。

「ここは……どこだ?」

 あたりを見回すと、高く生い茂る草や見慣れない花々が揺れている。地平線の向こうには低い山がいくつか連なり、風に乗って不思議な香りが漂ってきた。先ほどまでの研究施設の面影など微塵もない。

 立ち上がって身体をチェックしてみると、自分の姿がどこか幼いように感じられる。手足は引き締まっているが、研究室で酷使した肩や腰に感じていた重さが消えている。まるで数年前、いや数十年前に戻ったようだ。

「嘘だろ……?」

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