異世界農業革命 – プロローグ

「一樹先輩、ドローンの点検が終わりました。自動散水と肥料散布も同時に行う予定です。準備できたので確認お願いします。」

 女性研究員の森川が声をかけてきた。彼女はこのプロジェクトの副リーダー的存在で、ドローン制御などハードウェア面を担当している。

「ありがとう。すぐ行くよ。坂井は引き続きデータ取り頼む。」

「了解です!」

 一樹はタブレットを片手に、ドーム外のドローン発着場所へ向かう。そこには小型から大型まで数機のドローンが並び、その周囲を技術者たちが動き回っていた。すべてが順調に見えた。彼も同僚たちも、今日の実験が成功すれば、この技術をさらに拡張できると期待に胸をふくらませていた。

 しかし、わずかな不安が頭をよぎる。無人農業システムは複雑な制御を必要とし、特に肥料散布や農薬散布の精度を誤ると大きな事故につながる恐れがある。過去にはドローンの制御ミスで作物が全滅しかけた事例もある。一樹はリスク対策に万全を期してきたつもりだが、どこかで小さなトラブルが起きないとは限らない。

「さて、念のために最終チェックを……」

 彼がそう呟きながらメンテナンスパネルを覗いたとき、それは突然起きた。

 ドローンの一機が電磁ノイズを検知し、制御不能に陥ったらしい。技術者たちが慌てて遠隔操作を試みるが、ドローンはまるで意思を持ったかのように高速回転を始め、隣に並んでいた別のドローンと激突した。金属と金属がぶつかり合う甲高い衝撃音が響くとともに、火花が散る。

「危ない、伏せろ!」

 森川が叫び、一樹たち数人が咄嗟に身をかがめた。だが次の瞬間、大きな爆発音が鼓膜を破るかのように響き、強烈な衝撃波が全員を襲った。

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