異世界農業革命 – 第5話

 そこでシルヴィアが提案したのが、「魔力を活性化させる特殊な草や菌類」を組み合わせる方法だった。彼女が元々研究していた魔力浄化の一部理論を応用し、植物と共存する菌類が土の中で魔力を循環させれば、作物の成長促進にも一役買うのではないかという考えだ。

「この草や菌を培養して畑に混ぜ込み、そこに魔力を注入すれば、土がもっと元気になるはず。でも、まだ理論段階なの。それに、菌の扱いはすごくデリケートで……。」

「じゃあ、まずは小さい区画で試してみよう。俺も微生物を使った土壌改良には馴染みがあるから、協力できるはず。」

 微生物や菌類は元の世界でも重宝された土壌改善の要だ。それに魔力という未知の要素が加われば、より複雑にはなるが、成果が出れば大きな進歩になる。

 こうした前向きな試みが続くとともに、村の雰囲気は明らかに好転していった。かつては顔を曇らせるだけだった村人たちも、作業に熱心に取り組み、エル・リーフ村が活気を取り戻そうとしている。ガイは防衛面だけでなく、人手不足の場面では率先して畑作業に加わり、時折「うまくいくもんだな」と頬をほころばせる。エリアスも村長代理としての責務を果たすため、村人をまとめ上げ、農地拡大の計画を立案し始めていた。

 だが、順調なときほど外部からの風当たりも強くなる。領主のみならず、その上位の貴族階級からも「エル・リーフ村が異端の手法で急成長している」という噂が広まり、警戒されるようになっていた。領主派遣の役人があからさまに「怪しげな魔法で金儲けをたくらんでいるのではないか」と疑っているという話が、いつしか村に伝わってくる。村を一度盛り上げたからこそ、外部勢力にとっては「制御できない存在」に映るらしい。

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