異世界農業革命 – 第5話

 こうした状況に対抗するため、一樹たちは政治的な交渉にも乗り出すことを決意する。ドルトやエリアスが中心となり、かつて領主家と取り交わした記録や、他の村との協定を調べ始めた。どのような形であれば、新たな技術開発の独立性を守れつつ、領主の意向も最低限満たせるのか――そこに活路を見出さねばならない。

「税制改革ってわけじゃないけど、税の方法を変えるとか、あるいは領主家と何らかの契約を結んで“共同研究”のような形を取るとか……。どちらにせよ、ただ黙って受け身でいるのは危険です。」

 一樹が提案すると、エリアスも覚悟を固めたように頷く。「そうだね。領主家の顔色ばかり伺っていては、いつまでもこの村は支配下に置かれたままだ。何かしら交渉材料を用意して、こちらが主導権を握る方法を考えよう。」

 村が存続し、さらに発展していくためには政治的な立ち回りが不可欠だ。農業研究者として転生してきた一樹にとっては、未知の分野ではあるが、ここまで来たからには逃げるつもりはない。シルヴィアも「魔力絡みの研究を発展させて、その成果を示すことで領主や貴族を納得させられないか」と意気込む。ガイは相変わらず護衛という面で村を支えるが、政治的な動きに背を向けるわけにはいかないと感じ始めているようだった。

 このように、エル・リーフ村は農業革命の次なる段階を迎えていた。土壌改良や品種改良、魔力研究で大きく前進している一方で、領主や貴族の圧力がのしかかり、新たな対立の火種となり得る。自由な技術の発展を続けられるのか、それとも従属を強いられるのか。政治的な交渉と農業技術の進化が表裏一体となる中盤が、今まさに幕を開けようとしている。

プロローグ 第1話 第2話 第3話 第4話

タイトルとURLをコピーしました