異世界農業革命 – 第5話

 そしてある日、領主の館から正式な通達が届いた。そこには「技術開発と作物増産に関しては、領主の許可証が必要である。無断で新技術を用いることは領地の秩序を乱す行為だ」といった厳しい言葉が並んでいる。さらに「もし違反が認められれば、村全体に罰金や強制的な支配強化が実施される」とも記されていた。

「まるで、俺たちが勝手に悪事を働いているみたいな書き方だな……。」

 ドルトが苦虫を噛み潰したような表情を見せる。エリアスも肩を落とし、文字を追うたびに落胆の色を深める。「こんな書状を送ってくるなんて……。もう少し穏便に済ませてもらいたいものだが。」

 一樹は領主が単に偏見を抱いているだけではなく、領主自身もその上位の貴族や王家に対して責任を負わねばならない立場にあることを想像する。急速に豊かになりつつある村を“野放し”にすれば、領主の管理能力が疑われるかもしれない。そうなれば領主は貴族たちからの信任を失うリスクがある。それならば、力づくでもエル・リーフ村を統制し、技術を自分たちのものにしようとするのは自然な流れかもしれない。

「しかし、これ以上の支配強化を受ければ、村の自由な研究や発展が妨げられてしまいます。」

 シルヴィアが肩を落とす。実際、独自の研究を制限されたら品種改良や魔力活性の実験は思うように進められなくなる。村人も高い税や労役を課されれば、再生への意欲が萎えてしまうだろう。

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