異世界農業革命 – 第8話

 エリアスは希望的観測を口にするが、これまでの厳しい現実を知るだけに、素直に喜べない部分もあるようだ。それでも、領主が飢饉に困っているという事情を踏まえれば、取引の余地は十分にあると一樹は考えていた。

 その後、正式な協議の場が設けられ、エル・リーフ村は領主に一定数の作物や研究情報を提供することで、今までよりもはるかに軽い税率とある程度の自治権を認めてもらう形を取り付けるに至った。もちろん、領主も完全に善意で動いているわけではない。しかし「魔力を利用した土壌改良」と「増産が期待できる品種改良」の両方に強い関心を寄せるあまり、強制力を発動して村を押さえ込むよりも、協力して利益を得る道を選んだというわけだ。村にとっては苦渋の譲歩もあったが、かつてのように重税や理不尽な支配に苦しむよりは、はるかに前進した結果といえるだろう。

 これを機に、エル・リーフ村の成功物語は周辺地域へと急速に広まった。飢饉や荒地化に悩む村や町の人々が興味を示し、エル・リーフ村から技術指導を仰いだり、共同研究を持ち掛けたりするケースが増えていく。以前は「異端の実験村」と揶揄されていたが、いまや「奇跡の村」「新時代の農業の先駆け」と賞賛されることが多くなっていた。

「もしよければ、うちの村へ技術者を派遣してくれないか?」

「魔力浄化用の魔法陣を導入したいんだが、図面はいただけるのかな……?」

 各地からのそうした要望が殺到し、一樹やシルヴィア、エリアスは嬉しい悲鳴を上げる。ガイも護衛として出向くことが増え、まるで旅するように新天地での土壌調査や魔力調整に協力する日々が始まっていった。村の復興が周囲の地域まで巻き込んでいき、さらに大きなうねりを生み出し始めたのだ。

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