異世界農業革命 – 第8話

 こうしてエル・リーフ村は、名実ともに“異世界の農業革命”の中心地として君臨するようになった。一樹は、「自分がなぜこの世界に来たのか」という根本的な問いに少しだけ答えを見いだす。自分の持つ農業知識と、この世界特有の魔力が融合することで、多くの人々が飢えから解放される足掛かりが生まれるのではないか――そう思えるようになったのである。

「一樹さん、お客さんですよ。ほら、また別の村から視察団が来てるみたい。」

 シルヴィアが笑顔で声をかけると、一樹は畑で土壌を調べていた手を止め、顔を上げた。「こんなに忙しくなるなんて、思ってもみなかったな。でも、この機会を逃したくない。もっと多くの人に知ってもらいたいんだ。土と魔力がきちんと調和すれば、こんな荒れ地でも作物を育てられるってことを。」

 彼の瞳には、ただ与えられた世界ではなく、“自分たちの力で未来を切り拓く場所”としての意志が宿っていた。

 やがて、「エル・リーフ村の成功物語」は各地を巡り、ついには王都や大きな都市にまで伝わるようになる。おかげで一樹は“異世界の農業革命家”と呼ばれ、半ば英雄視されることもしばしばだった。とはいえ、一樹自身は「まだ足りないことが多い」と感じている。魔力枯渇の問題が完全に解決したわけではないし、技術の広がり方によっては新たな摩擦や欲望が生まれるかもしれない。だからこそ、研究はまだまだ続ける必要があるし、村だけでなく世界全体を豊かにするための次のステップを考えねばならないのだ。

 こうして多くの困難と奇跡を経たエル・リーフ村は、さらなる発展を予感させる熱気に包まれていた。先行きは不透明で、またいつ強大な障壁にぶつかるとも限らないが、人々の目は確かに未来を向いている。仲間たちと共に積み上げた研究と技術が、さらなる飛躍をもたらし、やがてこの世界に新たな時代を切り開く――誰もがそう確信していた。

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