プロローグ 第1話 第2話 第3話 第4話
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エル・リーフ村が魔力災害と外部勢力との激突を乗り越えてから、しばらくの時が流れた。村は以前にも増して活気を帯び、畑には新たな品種の作物が順調に育っている。大河一樹は自らが提唱してきた“魔法と農業知識の融合”が確かな成果を上げていることを肌で感じながら、さらなる研究の糸口を探していた。
ある日の朝、薄曇りの空の下で、一樹はシルヴィアと共に畑を見回っている。土壌の魔力流入を可視化するための簡易魔法陣を使い、作物の根元にある微生物の働きや土の養分バランスを確認するのが日課になっていた。調査を終えたシルヴィアが小さく感嘆の声を漏らす。「随分と安定しましたね。以前は魔力が強すぎて根が傷んでしまうことも多かったのに、今はほとんど問題ないなんて……。」
一樹はうなずきながら、「魔力と土壌の関係を徹底的に研究してきた成果だよ。微生物がうまく魔力を取り込んで、作物の成長を助ける。あのとき魔力調整システムの基礎を作って本当によかった」と微笑む。すでに村の畑は、単に食糧を生産する場を超えて、新たな研究拠点として機能し始めていた。
ガイは今日も村の外れで見回りをしている。盗賊や魔物の襲撃は以前ほど頻繁ではないが、完全に絶えたわけではない。彼の姿を見かけた村の若者が声をかける。「ガイさん、そろそろ周辺の荒地にも手を広げるんですよね? もし何かあったらすぐ連絡くださいよ。」