旅を続ける中で、陽斗たちは、ただ力を振るうだけでは解決できない内面の問題や過去の傷と向き合わざるを得なくなった。ある晩、森の中にひっそりと佇むキャンプ場で、焚き火の温もりを囲みながら、仲間たちは自然と語り合い、互いの心の奥底に潜む痛みや葛藤を明かしていった。
「俺は……かつて家族を守れなかった過去がある。」
ロレンスは、硬い表情の奥に深い悲しみを隠しながら、低い声で語り始めた。彼の瞳には、今も消えぬ失意と、守るべき信念への強い想いが浮かんでいる。
「あの日、敵に襲われた村で、家族を守れずにただ立ち尽くしていた。あれ以来、俺は誰よりも強くなり、守るべきものを失わぬよう、己を鍛えてきた。しかし、心の奥では、あの無力感が消えずにいるんだ…」
彼の言葉に、仲間たちは静かに耳を傾け、各々が心の中にしまい込んだ痛みを思い起こした。
エリナは、杖をそっと握り直しながら、しばらくの沈黙の後、口を開いた。
「私も……私の家系には、禁断とされる魔法が伝えられている。幼い頃、母からその力の恐ろしさと、使えば必ず代償を伴うことを教えられたの。あの魔法に頼れば、たとえどんな苦難も乗り越えられるかもしれない。でも、使うたびに自分の魂が蝕まれるような感覚に囚われるのよ。」
