美咲は、普通の大学生として、平凡だが穏やかな日々を送っていた。家族に愛され、友人にも恵まれた彼女は、周囲の人々に優しさをもって接し、困っている人には手を差し伸べることを欠かさなかった。そんな彼女が、突然の事故によって不慮の転生を遂げることになる。
異世界に目覚めた美咲は、異なる風景に囲まれ、最初は夢のような冒険が待っているのだと期待した。彼女の目には、美しい空、色とりどりの花が映り、輝く太陽が彼女を優しく照らした。しかし、すぐにその期待は現実に打ちひしがれた。この世界には、無慈悲な戦争と圧政が広がっていたのだ。星のように瞬く夜空とは裏腹に、道端には貧しい人々が疲れ果てた表情で座り込み、遠くでは戦の火花が見え隠れしていた。
美咲は、家族や友人を思い起こして涙を流す。人々の苦しみを目の当たりにし、自分の無力さに嫌気がさす。彼女は自分の優しさを武器に、この国の人々を助けられないかと、その考えに身を投じることを決意する。しかし、最初に彼女を迎えてくれた人々は、彼女を「聖女」と崇め、国を救う存在として期待を寄せていた。
美咲は、何も特別な力を持たない普通の女子大生である。彼女の優しさこそが、その役割を担うべき力だと信じようとがんばった。しかし、彼女は自分が選ばれた理由や運命から逃れられないことを徐々に悟る。空虚な期待に身をゆだねられ、やがて周囲の人が彼女に寄り添う中で、彼女自身の心が次第に崩れていくのだった。
美咲は、仲間たちと共に戦争で苦しむ人々を助けるために動き始めた。彼女は、医療の知識を活かし、負傷者を助けるために奔走し、物資が不足した人々に食事を届けたり、見捨てられた子供たちを保護する活動をする。しかし、そんな行動が逆に仲間たちを危険にさらしていく。
彼女の選んだ道には、悲劇が待ち受けていた。海を渡って次々と助けに赴く彼女と仲間たち。しかし、その道中で仲間たちは命を落としていった。
ある日、美咲は、彼女が仲間ともに避けていた戦闘に巻き込まれてしまった。夢中で走り続け、必死に逃げるその姿は、周囲の人々の目に映り、彼女が聖女である証を掲げているかのようだった。しかし、その雄姿の裏には、深い恐れや不安が隠れていた。
仲間が次々に倒れ、助けたいという強い思いは美咲の心を苛む。彼女の優しさが彼らを傷つける要因になっていることに薄々感づくのだ。彼女が無力であること、何も成し得ない自分に自責の念を感じる。仲間が自分の優しさを信じて選んだ道が、さらなる悲劇を生むことを無意識に感知しりながら、彼女は彼らのために力を尽くす。
だが、現実はそう甘くはない。彼女は多くの苦しみを抱え、仲間を失い、自らの非力を痛感する。美咲は、孤独感に襲われ、絶望的な状況に立たされる。これが、彼女が選んだ道なのか、果たして彼女の優しさは何を生み出すのかと、混乱した気持ちで迷う。
彼女の中には、優しさが時に人を傷つけ、孤独を生むことを実感し始めていた。美咲は、ある決意を抱きながら、果たして自分の存在意義を見つけ出さなければならなかった。果たして、彼女はこの無情な世界で何を成し遂げられるのか。優しさが力となることがあるのか、もしくはそれがさらなる悲劇を生むのか。それは彼女自身が選ぶ道であった。
美咲の物語は、彼女の優しさが彼女自身をどれだけ傷つけ、孤独を生み出していくのかを描いている。彼女はその選択がもたらす結末と向き合い続けることになる。そう、異世界の孤影は、優しさの裏に秘められた悲劇を描いた物語なのだ。