私は転送箱を抱え、車内で《エクスセル》を起動。敵の数と配置、魔力係数を即座に割り出す。
「影衛は十二、魔術師三、近接九! 西側低地に集中、残りは陽動だ!」
「了解!」ガルドが吠え、大剣の一閃で三人を一度に吹き飛ばす。
だが残り九十秒で、魔術師が再詠唱を完了してしまう。
その瞬間をリリィが見逃さない。
「ユウト、例の“トルクアダプタ”貸して!」
「ここで!?」
「これを矢尻に嵌めて──魔力過給弾にする!」
私は腰ポーチから歯車付属の金具を放り投げ、ティリアが空中で掴む。
弦を引き絞り、矢尻に輝くギアが高速回転。
「数字の人、射程計算は?」
「風向き一一、距離五十八、落差〇・二──撃て!」
矢が青い閃光を曳き、魔術師の杖へ直撃。ギアが魔力を逆流させ、詠唱陣が瞬時に崩壊する。
敵は撤退の煙幕を張り、森へ消えた。
静寂。焦げた草の匂いだけが残る。
私は荷台の帳簿を抱え直し、深く息をついた。
「第一波撃退。だが王都まではまだ遠い」
クラリスは軽く頷くと、空になった矢筒を見つめるティリアへ新しい束を渡した。
「この調子なら突破できるわ。けれど油断は禁物。ユウト、君の暗号化データは無傷ね?」
「はい。複製も生成済みです。……ただし敵は内部情報に詳しい。ギルド本部に協力者がいる可能性が高い」


















