異世界冒険者ギルドの日常 – 第4章:後編

 いいや、届く。数字は方法も示す。

「リリィ、トルクギアとフックを貸して!」

 私は腰の巻き尺をほどき、ギアに結びつける。

「ティリア、矢に括り付けて核座標の手前一メートルへ射出。ガルド、矢尻を踏み込み点に変換して反動を生み出すんだ!」

「了解!」

 矢が影の海へ突き刺さり、ギアがカラカラと回転。ガルドが大剣で踏みつけると、巻き尺が瞬時に巻き取られ、私の体が矢尻地点まで“高速巻取引き寄せ”された。

 副長の目が見開く。

「馬鹿な――!」

 私は帳簿の木製背表紙で右掌の刻印を叩き割った。パキン、と乾いた音。影の壁が一瞬で崩れ、黒炎が灰へ変わる。

「数字の男……!」

 副長は影を足場に撤退しようとするが、マリエルが監査印章を叩きつける。光条が鎖となって腕を拘束した。

「公金横領容疑で現行犯逮捕。逃げられると思わないことね」

 副長は呻き、だが薄く笑った。

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