「……宰相閣下は諦めない。評議会が始まる前に、第四課本隊が動く」
時間は八時五十五分。大法廷の扉は目前。だが副長の言葉が真なら、廊下か議場でさらなる襲撃が来る。
私は笑みを引き締め、帳簿を強く抱いた。
「数字が示す真実は黙らせられない。次は“灰色宰相”その人に会いに行こう」
クラリスが隣で剣の柄を握り直す。
「窓口係が宰相と面会か。面白い一日になりそうね」
ガルドが肩を回し、ティリアが新しい矢にジャマー弾を装填する。リリィは摩耗したギアを取り替え、カタパルトの弾性を確認した。
回廊の先、大理石の大階段を登れば議場中枢。光はそこから差し込むが、同時に深い影の揺らぎも見える。
私は腕章を撫で、深呼吸して宣言した。
「窓口は戦場、数字は剣――行こう。王国の帳尻を合わせに」
定食隊と監査官は並んで歩き出す。階段の上からは聖堂の鐘音が聞こえ始めた。午前九時。最終決算まで、あと一時間。


















