異世界冒険者ギルドの日常 – 第4章:後編

「……宰相閣下は諦めない。評議会が始まる前に、第四課本隊が動く」

 時間は八時五十五分。大法廷の扉は目前。だが副長の言葉が真なら、廊下か議場でさらなる襲撃が来る。

 私は笑みを引き締め、帳簿を強く抱いた。

「数字が示す真実は黙らせられない。次は“灰色宰相”その人に会いに行こう」

 クラリスが隣で剣の柄を握り直す。

「窓口係が宰相と面会か。面白い一日になりそうね」

 ガルドが肩を回し、ティリアが新しい矢にジャマー弾を装填する。リリィは摩耗したギアを取り替え、カタパルトの弾性を確認した。

 回廊の先、大理石の大階段を登れば議場中枢。光はそこから差し込むが、同時に深い影の揺らぎも見える。

 私は腕章を撫で、深呼吸して宣言した。

「窓口は戦場、数字は剣――行こう。王国の帳尻を合わせに」

 定食隊と監査官は並んで歩き出す。階段の上からは聖堂の鐘音が聞こえ始めた。午前九時。最終決算まで、あと一時間。

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