異世界冒険者ギルドの日常 – 第8章:後編

 白大理石の大ホール。ガラス張りの天窓から降り注ぐ光が、円形ステージ中央の水晶講壇を照らしている。

 観覧席には各支部のギルド長、王国重鎮、そして街の子どもたちまでぎっしり。背伸びしたカミルが最前列で手を振るのが見えた。

 式典が始まり、第一部は各支部の災害救援隊への表彰。第二部で「王国財務健全化功労者」の名前が読み上げられた。

 「冒険者ギルド・トリス支部 “日替わり定食隊”!」

 盛大な拍手と共に、私たちは舞台へ上がった。ティリアの桜色チェインメイルは太陽の向きで薔薇色へ揺らぎ、ガルドの金襟が輝く。リリィは袖口の歯車カフスを誇らしげに掲げた。

 王国摂政代理が功労章を授与し、白手袋で握手を交わす。

 「数字の力で王国を救った功績、国民一同感謝する」

 「窓口の仕事をしただけです」

 返す私の言葉に場が和み、笑い声が波のように広がった。

 いよいよスピーチの番。マリエルが講壇へ私を促し、会場照明が一点に集束する。

 喉が少しかすれる──だが観客席からカミルが掲げた拳、リリィの親指、ティリアの弓袋タップ、ガルドの豪快なガッツポーズが視界に入り、不思議と緊張は溶けた。

 「題は『笑顔を生む決算書』です」

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