異世界冒険者ギルドの日常 – 第8章:後編

 私は深呼吸し、言葉を紡いだ。

 ――数字は冷たい記号に見えるかもしれません。

 でも窓口に立つたび、私は数字を“ありがとう”に換える力を見ます。

 足りないポーション代を捻出する式、仲間を生かす装備を整える予算、そして国を守る決算。

 帳簿は剣にも盾にもなりました。けれど最後に残るのは、数字ではない。

 手渡した硬貨の先にある、冒険者の笑顔──それこそが本当の収益です。

 私たちはこれからも、赤字だろうが黒字だろうが、人の挑戦を支える仕訳を続けます。

 窓口は戦場。でもそこには、明日の笑顔を仕込む余白が必ずあるのです。

 言い終えると、ホールは一瞬静まり、やがて地鳴りのような拍手が巻き起こった。

 マリエルが涙を拭いながら肩を叩き、クラリスが胸に手を当てて微笑む。

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