私は深呼吸し、言葉を紡いだ。
――数字は冷たい記号に見えるかもしれません。
でも窓口に立つたび、私は数字を“ありがとう”に換える力を見ます。
足りないポーション代を捻出する式、仲間を生かす装備を整える予算、そして国を守る決算。
帳簿は剣にも盾にもなりました。けれど最後に残るのは、数字ではない。
手渡した硬貨の先にある、冒険者の笑顔──それこそが本当の収益です。
私たちはこれからも、赤字だろうが黒字だろうが、人の挑戦を支える仕訳を続けます。
窓口は戦場。でもそこには、明日の笑顔を仕込む余白が必ずあるのです。
言い終えると、ホールは一瞬静まり、やがて地鳴りのような拍手が巻き起こった。
マリエルが涙を拭いながら肩を叩き、クラリスが胸に手を当てて微笑む。



















