式後のパレードでは、市民が投げる紙花が桜色チェインメイルに降り積もった。
「ユウト!」
ティリアが人混みの中で立ち止まり、頬を紅潮させて小さな包みを差し出した。
「これ、スピーチのお礼……矢羽根の耳栓。夜中にデータ整理する時、静かに集中できるでしょ」
「ありがとう。じゃあ僕からは――」
私が差し出したのは、携帯計算石に彫った小さな弓のシンボル。ティリアは耳まで真っ赤にしてうなずくと、人混みに紛れてしまった。
夜。王都の空に花火が上がる。宿の窓からそれを眺めながら、私は日報帳に今日の行を記した。
《クレーム0 笑顔?(桁あふれ) 未来への繰越:∞ではなく有限大》
数字は終わりがある。けれど笑顔の数は、また明日増資できる。
窓口係の戦いは続く──けれど今夜だけは最高益。
私はペンを置き、仲間の笑い声が響く食堂へ向かった。
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