檀上では“日替わり定食隊”をはじめ、前夜の湖底と祭壇防衛に貢献した人々が紹介されていた。ティリアは桜色チェインメイルのケープをなびかせ、ガルドは燕尾を正し、リリィはギアカフスを誇らしげに磨き上げる。
そこへ世界樹祭委員長が現れ、最後の儀式――“芽吹きの歳計”を告げた。祭壇炉心へ世界樹貨の小袋を投じ、大陸全土へ繁栄を還元する神事だ。
しかし投じられる貨幣は、今年だけ“透明の樹脂製チップ”に置き換えられていた。鋳造量はゼロ、価値は“感謝ポイント”として計上。ロジェ補佐官が壇上で解説する。
「魔力と直接交換しない、いわば“数字の種子”。収穫は翌年の正決算で初めて花開く――未実現でも価値を約束できる、新しい会計の芽です」
ユウトはロジェの側へ歩み寄り、小声で耳打ちした。
「君が提案したのか?」
「いえ、あなたの“未実現課税”を見てひらめいた人がいて。私はただ式を整えただけです」
式──それはマリエル監査官だった。観覧席で目が合うと、彼女は眼鏡越しにそっとウインクした。



















