異世界冒険者ギルドの日常 – 第10章:後編

 夜。花火が上がり、湖面に多色の輪を描く。

 ガルドは屋台の肉串を両手に、リリィは歯車細工の光る風車を子どもたちへ配り歩く。クラリス支部長とロジェは仮設ステージで「会計漫才」と称する寸劇を披露し、観客を爆笑させていた。

 ユウトは日報帳の最後のページにペンを走らせる。

世界樹祭臨時決算

 収入:笑顔 + 未来ポイント

 支出:疲労 – 満腹度

 繰越利益:∞ではなく“育つ数字”

 数字はいつか締め切りが来る。

 でも、それが次の芽吹きを邪魔する理由にはならない。

 花火が炸裂し、夜空に巨大な世界樹のシルエットを描いた。

 ユウトはペンを置き、仲間たちの笑顔を見渡した。

 ――窓口係の仕事は決して終わらない。明日もまた、誰かの挑戦を数字で支えるために。

 そして世界樹の枝先には、はるか未来の決算書が――まだ白紙のまま、微笑んで揺れていた。

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