夜。花火が上がり、湖面に多色の輪を描く。
ガルドは屋台の肉串を両手に、リリィは歯車細工の光る風車を子どもたちへ配り歩く。クラリス支部長とロジェは仮設ステージで「会計漫才」と称する寸劇を披露し、観客を爆笑させていた。
ユウトは日報帳の最後のページにペンを走らせる。
世界樹祭臨時決算
収入:笑顔 + 未来ポイント
支出:疲労 – 満腹度
繰越利益:∞ではなく“育つ数字”
数字はいつか締め切りが来る。
でも、それが次の芽吹きを邪魔する理由にはならない。
花火が炸裂し、夜空に巨大な世界樹のシルエットを描いた。
ユウトはペンを置き、仲間たちの笑顔を見渡した。
――窓口係の仕事は決して終わらない。明日もまた、誰かの挑戦を数字で支えるために。
そして世界樹の枝先には、はるか未来の決算書が――まだ白紙のまま、微笑んで揺れていた。
第1章: 前編|後編 第2章: 前編|後編 第3章: 前編|後編 第4章: 前編|後編
第5章: 前編|後編 第6章: 前編|後編 第7章: 前編|後編 第8章: 前編|後編
第9章: 前編|後編 第10章: 前編|後編



















