異世界冒険者ギルドの日常 – 第11章:後編

 夜半、雪中宿営。テントを張り終えたころ、微かな鈴音が吹雪に紛れた。

 ティリアが弦を鳴らし警戒の合図を出すと、暗闇からフード姿の老人が滑り込む。

 「お助けを、ギルドの方か……? 倉庫番は私だけが生き残りで……」

 老人は凍える指で、半分焦げた帳簿を差し出した。

 「空白領収書を燃すと“在庫が帰ってくる”と騙され……気付けば倉庫は塵に」

 ユウトは焼損したページを慎重に開き、残った罫線へ補完式を当てる。

 =ARRAY_RESUME(欠損行)

 褪せたインクの下から、領収書の発行回数と時間が復元された。

 「間隔は正確に六時間おき。自動発行装置がある」

 リリィは時計を見て叫ぶ。

 「次の発行まで四十五分!」

 老人の案内で吹雪の谷を下ると、氷壁に穿たれた横穴から橙色の火が漏れていた。

 「倉庫跡はここだ」

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