夜半、雪中宿営。テントを張り終えたころ、微かな鈴音が吹雪に紛れた。
ティリアが弦を鳴らし警戒の合図を出すと、暗闇からフード姿の老人が滑り込む。
「お助けを、ギルドの方か……? 倉庫番は私だけが生き残りで……」
老人は凍える指で、半分焦げた帳簿を差し出した。
「空白領収書を燃すと“在庫が帰ってくる”と騙され……気付けば倉庫は塵に」
ユウトは焼損したページを慎重に開き、残った罫線へ補完式を当てる。
=ARRAY_RESUME(欠損行)
褪せたインクの下から、領収書の発行回数と時間が復元された。
「間隔は正確に六時間おき。自動発行装置がある」
リリィは時計を見て叫ぶ。
「次の発行まで四十五分!」
老人の案内で吹雪の谷を下ると、氷壁に穿たれた横穴から橙色の火が漏れていた。
「倉庫跡はここだ」



















