星降る夜の奇跡 – 第1話

夕方が過ぎ、やがて夜の帳が下りる頃、サヤは軽く体を動かして疲れをほぐしつつ、戸締まりを済ませてふと外へ出てみた。視線を上げると、そこには都会では想像もつかなかった光景が広がっている。夜空いっぱいに瞬く星の群れ。まるで漆黒のキャンバスに宝石を散りばめたかのようだ。サヤは思わず「わあ……」と声をあげ、胸が高鳴るのを感じる。日が暮れると暗闇が深くなる田舎の夜は、都会の明かりが届かない分、星の輝きが一段と鮮明だと聞いたことはあった。しかし、これほどまでとは思わなかった。

「きれい……」

一言、そう漏らしながらサヤは立ち尽くしたまま、しばらく天を仰ぎ続ける。次々と瞬く星々は、それぞれが小さな灯火のように、サヤの心に希望を与えているようでもあった。「どうして私は、こんなにきれいなものを見過ごして生きてきたのだろう」という考えが頭をよぎり、少し切ない気持ちになる。それでも、こんなにも美しい夜空を前にすると、「ここに来るという決断は間違いじゃなかったかもしれない」と素直に思えるから不思議だ。

心から安心できる場所を求めて飛び込んできた、見知らぬ山奥の村。広大な自然と澄んだ空気。サヤは明日から始まる新生活に多少の不安を抱きつつも、夜空に輝く星のようにどこか胸が弾む感覚を覚えていた。都会での苦悩を抱えていた自分が、こんなふうに大自然の中に身を置いたら、少しは変われるのだろうか。変わるのではなく、もしかすると、本来の自分を取り戻せるのかもしれない。そんな予感が、微かながら確かに胸の奥で灯っていた。

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