古びた手紙の秘密 – 第4話

そうして、アカリは再び港町を訪れた。前回と同じく、小さな駅で降りると淡い潮の香りが鼻をくすぐる。日差しが強いが、どこか懐かしさを感じる町並みは変わらない。喫茶店「サクラ」の扉を開けると、ちょうどカズマがカウンター席に座ってコーヒーを啜っているところだった。アカリと目が合うと、一瞬戸惑いの表情を浮かべるが、「また来てくれたのか」と、わずかにほほ笑む。

アカリは店主に軽く挨拶をしてから、カズマの隣に腰を下ろす。周囲に他の客の姿はなく、カウンターを挟んで店主が静かに作業をしているだけだ。「あの……。今日はお伝えしたいことがあって来ました。少しお時間をもらっていいですか?」アカリがそう申し出ると、カズマは気持ちを整えるように小さく息をつく。「ああ、いいよ。場所を移そうか。」そうして二人は、店の奥のテーブル席へ移動した。

アカリはバッグから祖母の日記と写真、未送の手紙をそっと取り出し、テーブルの上に並べていく。「実は、これらを整理しているうちにわかったことがあるんです。戦後の混乱期や家族の都合で、ばあちゃんはどうしてもカズマさんとの関係を続けられなかったみたいで……」そう言葉をつなぎながら、祖母が泣く泣く連絡を絶った経緯を説明する。家業や縁談、貧しさなど、当時の重い事情が次々と浮かび上がったことも。

カズマは黙ってうなずきながら聞いていたが、日記に書かれた文章を目にした瞬間、明らかに表情が変わった。「これは……あの子の字だな。昔と全然変わっていない。」祖母の筆跡をなぞるように見つめるカズマの瞳には、懐かしさと哀しみが入り混じった光が宿っている。

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