運命のレシピ – エピローグ

 午後、店の休憩時間。リナは裏庭のハーブ畑で、片膝をつくタケルに呼ばれた。

 「リナ、渡したいものがある。」

 差し出されたのは小さなスケッチブック。表紙には二人の筆跡で《Future Menu – 1st voyage》と書かれている。ページをめくると、世界地図とともに「ペルー:紫トウモロコシ×白雪ニンジン」「スペイン:バレンシア米×里山ハーブ」など、各国と故郷の食材を掛け合わせたメモが躍っていた。

 「店が安定したら、一年に一度、世界を旅して新しい“運命の味”を探そう。お客さんには旅のたびに新メニューを届ける。」

 驚きながら見上げたリナの頬に、初夏の光が反射して金色の粒が踊る。タケルは続けた。

 「行く先々で種やレシピを集めて、またここで芽吹かせるんだ。僕らの旅が、この町の味になる。」

 指でページの角をそっと撫で、リナは静かにうなずいた。「未来のメニュー表、書き込むスペースが足りなくなるかもね。」

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