運命のレシピ – エピローグ

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ふたりの“未来メニュー”

 開店から半年後の初夏。〈レシピ・デスティーノ〉のテラスには、白雪ニンジン畑を渡ってきた甘い風が吹きこみ、ハーブのプランターをやさしくゆらしていた。

 ランチ営業がひと段落すると、店内の子どもキッチンに白いコック帽が並ぶ。小学三年生のミオが大きなお玉を握りしめ、「今日は“未来のパエリア”をつくるんだよね!」と声を弾ませた。

 「そう。お米は地元の棚田米、サフランの代わりに白雪ニンジンのパウダーで色と香りをつけるんだ。」

 リナが説明すると、子どもたちの瞳がぱっと輝く。カウンター越しにタケルがフライパンを温め、オリーブオイルの湖面でニンニクとローズマリーを泳がせた。

 鍋から立つ香りが厨房全体を満たすと、マミが焼きたての「森のシフォン」を運びながら冗談を飛ばす。

 「ねえねえ、子どもたちと一緒に店を回してると私たちのほうが学んでる気がしない?」

 リナは笑い、「いつかここから未来のシェフが生まれるかも」と返す。その言葉にミオが手を挙げ、「わたし、大きくなったらここで働きたい!」と宣言した。歓声と拍手。伊藤はカウンター奥で原価表を確認しながら「採用枠、今から確保しとこう」とユーモアを重ねる。

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