ニューロネットの夜明け – 第5章:企業潜入と対立|後編

エリカは手際よくデスク上の端末にアクセスを試みながら、冷静を装って問いかける。

「“プロジェクト・シナプス”について、知ってることを話して。私も少しは掴んでるけど、全貌を知るには内部資料が必要。協力してくれない?」

レオナルドはデスクの端末を操作しようとするエリカに向け、片手を差し出して静止させる。

「やめろ。どれほどの腕があっても、今はすぐに探られる。セキュリティチームがこの部屋のアクセスログを監視している。俺が止めているうちに、ここを出て行ったほうがいい」

「そんな余裕はないの。あなたもわかってるはず。意識共有だか意識統合だか知らないけど、人々の自由を奪う計画が具体的に進められている。このまま誰も何もせずにいれば、取り返しのつかないことになるわ」

エリカは声を低くしつつも熱を帯びた調子で訴える。脳裏には被験者たちが錯乱状態に陥ったデータの映像がよぎり、自分が止めなくてはという焦燥感がさらに募る。

レオナルドは苦い表情を崩さず、机の角に手をついて深く息を吐く。

「“プロジェクト・シナプス”は、表向きは次世代セキュリティ基盤の研究という名目だが、その実体はもっと大きい。政府機関とも結びついていて、究極的にはニューロチップを使って人々の意識を管理・共有しようとする構想だ。たぶん……その背後には、軍事や政治的な思惑もある」

「やっぱり……」

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