ニューロネットの夜明け – 第5章:企業潜入と対立|後編

「ありがとう。私は必ず、この計画を止めるために動く。だからあなたも——」

言いかけるエリカを遮るように、レオナルドが小さく首を振る。

「今は何も言わない。……行け、早く」

エリカは歯がみをしながら通路へと駆け出す。直後にオフィスのメインドアが開き、警備員が怒鳴り声を上げるのが聞こえた。レオナルドがどう対応するのか、エリカには知る由もない。急な脱出口を与えてくれたことで、少なくとも一瞬の猶予はできた。

オフィス棟の裏手に抜ける非常口を通り、エリカは廊下を駆け下りる。周囲の警戒態勢はさらに厳しさを増していた。警備ドローンがフロアを巡回し始めたというアラート情報が、脳内チップに伝わってくる。完全に包囲されるまでの時間はほとんど残されていない。

エリカは脇道から階段へ飛び込み、一気に下層へ降りる。偽造IDと脳内チップのジャミングツールを併用しながら、かろうじて警備を攪乱することに成功。非常階段の狭いスペースを通り抜け、なんとか搬入口付近に出ると、そこには厳重なシャッターが降りていた。だが、インフォリベレーション側が外からアクセスをかけ、シャッターのロックを数秒だけ解除してくれるという打ち合わせをしてあった。

「早く……!」

シャッターがわずかに開いた隙間から、エリカは身を低くして転がり出るように外へ飛び出す。外気が肌に触れた瞬間、ビルの裏手に配置されている警備ドローンが赤いライトを点滅させ、急加速でこちらへ向かってきた。警報がかすかに鳴り響くが、エリカは物陰に身を潜めながらインフォリベレーションの用意してくれた小型車両に乗り込む。

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