ニューロネットの夜明け – 第5章:企業潜入と対立|後編

エリカは自分の中の警戒心と確信が重なり合うのを感じる。彼女が見てきた断片的な情報と、レオナルドの言葉は合致していた。ならば、エリカの行動は間違っていない——そう思う反面、レオナルドがそこまで把握していながら止められないという事実にも苛立ちを覚える。

「どうしてあなたは止めないの? あなたほどの立場なら、情報をリークすることだってできるでしょう?」

そう詰め寄るエリカに対し、レオナルドは苦渋の表情を浮かべて首を振る。

「もう俺一人の力ではどうにもならないんだ。企業の幹部という肩書きは強力だが、同時に責任や圧力も伴う。上層部は政府や軍との契約を握っていて、ここで俺が反抗すれば速やかに排除されるだろう。表沙汰にすれば……それこそ大勢が巻き込まれる可能性がある」

「巻き込まれるのは、もう始まってる。あなた、気づいてるでしょう?」

エリカの言葉に、レオナルドは目を伏せたまま何かを言いかけるが、口をつぐむ。部屋の外では、警備員が必死にドアロックを解除しようとしている音が響いていた。エリカはデスクの端末に再度接続を試みるが、強固なロックがかけられており突破に時間がかかりそうだ。

「情報を公開して。このままだと、あなたもいずれ逃げられなくなる。今ならまだ証言者として助かる道もあるかもしれない」

レオナルドは苦い笑みを浮かべ、視線をエリカへ向ける。そこには懐かしさと、どこか諦観したような色が宿っている。

「そう簡単にはいかない。それに、俺自身もこの計画の一部を担ってきた責任がある。裏切り者として処分されるだけならまだしも、場合によっては家族や関係者まで被害が及ぶかもしれない。そんなリスクを負う勇気がまだ出せないんだ」

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