ニューロネットの夜明け – 第5章:企業潜入と対立|後編

エリカはそれを聞いて苛立ちを抑えられない。かつては共に自由を求めていたハッカー仲間が、いまや巨大権力の下で身動きできなくなっている現実が、もどかしくてたまらなかった。

「レオナルド……あなたは変わったのね」

そう言葉を吐き出すと、レオナルドはかすかに肩を震わせ、静かに目を閉じる。

「本当は、どうにかしたい気持ちがないわけじゃない。だけど、今はまだその時じゃないんだ。俺が逆らえば、計画が加速するだけかもしれない。だからこそ、君に言えるのは一つ——ここを去れ。今はまだ早すぎる。すぐに捕まったら、君が持つ情報も無駄になる」

エリカは唇を噛みしめる。レオナルドの意図はわかるが、やりきれない憤りがこみ上げてくる。しかしこの場で対立を深めても何の得もない。ドアの外ではついにロックが解除されかけ、わずかな隙間から警備員の足音が聞こえてきた。

「……わかった。でも、あなただっていつまでも躊躇していられないわよ。これはあなたたちだけの問題じゃない。人間の自由が失われるかどうかの瀬戸際なの」

エリカの言葉に、レオナルドはうなずくでもなく、ただ悲しげに視線を落としている。部屋の隅に赤い警告ランプが点滅し始め、ドアが開きかけた。彼は最後の抵抗としてか、操作パネルを叩いてドアロックの再度の制御を試みる。ほんの数秒だけ稼ぐ時間ができた。

「行ってくれ。企業のガードだけじゃない、政府側の特殊チームも呼び寄せている。捕まれば何が起きてもおかしくない。君がもっと大きな局面で動くためにも、ここで終わらないでくれ」

レオナルドはそう言うと、意を決したようにエリカの肩を押し、隣接する室内通路の扉を開く。こちらは非常用の連絡通路らしく、警備員からは見えない位置だ。エリカは戸惑いつつも、レオナルドの行動を利用するしかない。

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