夜の記憶 – 第2章

エリカは震える手で祠に触れた。木材は湿気で腐りかけており、苔がびっしりと覆っている。風化が進み、長い年月が経っていることがわかる。祠の中を覗き込むと、そこには小さな石像のようなものが置かれていた。それは人の顔をかたどったもので、何かを睨みつけるような表情をしている。薄暗い森の中でそれを見ると、得体の知れない不安が体中を駆け巡った。

そのとき、背後でガサリと音がした。エリカは驚いて振り返る。しかし、誰もいない。ただ、風に揺れる枝葉の音が聞こえるだけだった。

「落ち着いて……風の音よ……ただの風……」

自分に言い聞かせながらも、背後に何かの気配を感じるようで、エリカは振り返りながら祠を離れた。すると、地面に半ば埋もれる形で、小さな銀色の光るものが目に入った。それを掘り出してみると、それは古びたロケットペンダントだった。

「これ……」

エリカは慎重にペンダントを開いた。中には古い写真が挟まれていた。写真には若い女性が笑顔で写っている。その顔には見覚えがあった。先日、記事で見た椎名亜沙子のものだった。

「亜沙子さんの……もの?」

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