夜の記憶 – 第4章

「祠ですか……」真壁は少し考え込むような仕草をした。「あそこはもうずっと昔から地元の伝承に残る場所ですね。でも、それが今どうかされましたか?」

「実は、森の中で失踪事件の手がかりになるものを見つけたんです。」エリカは慎重に言葉を選びながら答えた。「10年前、椎名亜沙子さんという女性が失踪された事件についてご存知ですか?」

真壁の顔に微かな変化が現れた。だが、すぐに笑顔を取り戻し、「ええ、覚えていますよ。あの事件は町にとっても痛ましい出来事でした。ただ、私自身はあまり深く関与していませんが。」と答えた。

エリカは彼の反応を観察しながら、さらに踏み込んだ質問を投げかけた。「亜沙子さんが失踪した直前、真壁さんが祠の近くで何かの開発計画を進めていたという記録を見つけました。その計画について詳しく教えていただけますか?」

「なるほど、そんな古い話を掘り返しているんですね。」真壁は笑顔を保ちながらも、声に少し鋭さが混じった。「確かに、あの頃私は森の一部を利用する計画を立てていました。でも、住民の反対もあって、計画は中止しました。それが全てですよ。」

「住民の反対というのは、具体的にどのような内容だったのでしょうか?」

「詳しいことは覚えていません。ただ、祠は地元の人々にとって特別な場所ですからね。それ以上のことは、私にはわかりません。」

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