赤い封筒 – 第4話

「仮にミツルが生きていて、こんな形でメッセージを送ってくるとしたら……俺はやつに何ができる? あるいは止められるのか?」

「何も決まったわけじゃない。それに、本当にミツルが犯人だとしても、おまえだけで動くのは危険すぎる。そもそも事件との関連が確定してない以上、今わかるのは、ミツルの詩と赤い封筒の詩が似ているという事実だけだ。」

 シンイチはそう言い、資料を閉じてアキラに手渡す。この情報がすべて正しいとは限らないし、まだ仮説の域を出ない。だが、過去にミツルが巻き込まれたとされる出来事と、アキラの存在が微妙に結び付いているとなれば、捨て置くわけにはいかない。

 店を出るころにはすっかり夕暮れが迫っていた。淡い橙色の光が通りを染め、遠くでは鳴き始めた虫の音がかすかに聞こえる。アキラとシンイチは並んで歩きながら、それぞれ黙り込んでいた。何を言っても推測にしかならないからこそ、簡単には口を開けない。だが、アキラの脳裏にはミツルの姿がはっきりと刻まれていた――文学フロアの休憩室でいつも小さなノートに詩を書きつけていた青年の後ろ姿。その背中にはいつも暗い影がつきまとい、話しかけようとしてもどこか拒絶されるような雰囲気を放っていた。

「仮にミツルが本当に赤い封筒を送っているとしたら、その理由は何なんだろう……? 単に過去の憎しみの延長なのか、あるいは自分の詩を世にアピールするためか……?」

「さあな。ただ、やつが失踪していたという事実と、このタイミングでの詩のエスカレートが結びつくなら、かなり危険な状況かもしれない。警察にも早めに報告したほうがいい。もちろん、軽くあしらわれる可能性が高いが。」

 アキラは首を縦に振るが、内心はまだ整理がつかない。自分があの大学時代の“ある事件”にどこまで関わっていたのかもはっきり思い出せないし、まさかミツルが失踪中にこんな形で暗躍しているなど、想像もしていなかった。彼が真に事件と結びついているのかどうか、あるいは第三者がミツルの詩を利用しているだけなのか……。謎は増えるばかりだ。

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