赤い封筒 – 第4話

 その日の夕方、アキラはシンイチを呼び出し、郊外にある小さな喫茶店で待ち合わせをした。店の窓の外には、住宅地の細い路地と、枯れかけた植栽が見える。客の数はまばらで、静かな雰囲気だ。テーブルを挟んで向かい合うと、アキラは詩集を取り出して開いてみせる。

「これ、大学の頃にミツルって男が書いた詩なんだ。ちょっと読んでみてくれないか?」

「ミツル……? 以前、名前を聞いた覚えがあるような。」

 シンイチは静かに目を落として、ページの言葉をなぞる。そこには暗いイメージや破壊的な表現が繰り返され、強い孤独と悲しみが滲み出ている。読んでいるうちに、赤い封筒の詩と似た匂いを感じることに気づいたのか、シンイチは顔を上げた。

「たしかに、赤い封筒の詩と類似点があるな。具体的な単語もかぶっている部分があるし、表現の仕方に独特の癖を感じる。」

「そうなんだ。ミツルはもともと文学少女みたいに繊細で、いつもノートに詩を書いてたやつだった。そういう意味では、差出人として考えられなくもない。でも、やつは数年前に失踪したと聞いてる。今さらどうやって送ってきてるんだろう?」

「失踪が本当だとして、いまも生きているのかどうかすら不明だろう。そうなると、“誰かがミツルの詩を真似している”という可能性もある。」

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